この店の料理を食べたくて、てくてく歩いてくる人達が次々にドアをたたいて
いつもこの店のテーブルは満席になる。
白い壁と、すりガラスの窓、木の床の居心地のいいトラットリア。
かっこいい奥様と、厨房でひたすら作りつづけるシェフと、活気のあるスタッフの方。
絶品ポルチーニにお客さん達の笑い声がはじける。
このテーブルの花を毎週活けるのは私達の誇りだ。
この店をだすまではいろいろあったよ
ほんっとに困って もうどうしようかって時も何度もあったしな。
でも誰かに助けられてきたんだよ
そういうもんだよ
だから、うちのスタッフがここを独立してく時とかさ、
これから店だすやつがいる時とかさ
うちがそのときなんかできればなって、ふつうに思うよ。
確信にみちた口ぶりでシェフが話してくれた。
ふと目を落とせば
テーブルの上でがっちり組まれたシェフの手は
ずっと包丁を握り、フライパンをふるってきた、かっしりしたはたらく手で
そうか、だからこの言葉がこんなに力を持っているのかと、思った。