5月とは思えないほど暑い日、大きな枝をかついで配達中に、その公園に迷い込みました。
大きな木立が茂り、代官山の喧騒がうそのように静まりかえっていて
風で葉がざわざわいう音だけが聞こえていました。
うっそうと茂る木の下の坂道を歩いていくと、突然古い団地と公園が現れたのです。
建物は荒れ、窓は割れているものの、どこからか食事の支度の音がきこえて
ひなげしやホトトギスなどの懐かしい花が植えられていて、生活の気配がありました。
そして打ち捨てられたような、草が生い茂る公園には、
何匹ものネコが集会のように、ただ、そこにいたのでした。
こどもの頃の夏休みを思い出すような、その風景をもう一度見たくて
次の週もそのあたりに出かけたけど、いくら探しても行き着けなかったのです。
迷ったときにだけ出会える幻のネコ団地。
そして今日やっとみつけました。
ちょうどにわか雨がふりだした時で、ネコたちは軒下にあつまって胡散臭げにこちらを見ていました。
よい写真が撮れますか、という声がしてびっくりして振り向くと
住人らしき女性がたっていました。
勝手に入り込んだことを怒られるかと思いましたがそんなことはなくて、
このネコたちはみんなノラネコよ、なんて言いながらその人は
ネコのごはんが盛られたお皿を、雨のかからないところにそっと置き換えたのでした。